インパクト理論とは|その意味やプログラムセオリーとの関係性

この記事では、プログラム評価における重要な概念の一つである「インパクト理論」について、その意味やプログラムセオリーとの関係性、評価に関する考え方などを具体例をもとに解説します。

インパクト理論とは何か

インパクト理論 (Impact Theory / Program Impact Theory)」とは、あるプログラムにおける活動を「原因」、それによって実現される社会状態の改善を「結果」と捉え、両者の関係を一連の「因果関係」として表現したものです(Rossi 2003)。

インパクト理論あるプログラムにおける活動を「原因」、それによって実現される社会状態の改善を「結果」と捉え、両者の関係を一連の「因果関係」として表現したもの

これは端的には、ある社会課題が解決された状態(アウトカム)と、それをもたらすプログラムの活動との間の、「手段ー目的」の関係を示すものと理解できます。なお、ここでの「プログラム」は、単一の「施策」や複数の施策を束ねた「事業」など、ある社会課題の解決に向けた取り組み全体を指します。

 あるプログラムに関するインパクト理論は、そのプログラムが生じさせる変化のプロセスと、それによって実現される状態に関する複数の「仮説」によって構成されます。最もシンプルなインパクト理論は、以下のようなものです。

インパクト理論

作成:Intelligence In Society

インパクト理論は、このようにシンプルなものから、「政府の少子化対策による合計特殊出生率の上昇に対する効果」に関するもののような複雑なものまで、様々なレベルの複雑さや厳密さで表現することができます。

インパクト理論の各要素は特定の「原因」または「結果」に該当し、これらの一連の因果関係の繋がりが、「活動」で始まり「社会状態の変化」で完結するプログラム全体の因果関係を表現しています。特に、最終的に目指す成果である「遠位のアウトカム」(上図②)は、活動から直接期待される結果である「近位のアウトカム」(上図①)を通じて実現されるものとして表現されます。

インパクト理論とプログラムセオリー

プログラムセオリー (Program Theory)」とは、この「インパクト理論」と、プログラムによる活動がターゲット集団に届く道筋を示した「プロセス理論」の2つを合わせたものです。「プログラムセオリー」の他に、ロジックモデルセオリーオブチェンジ、プログラムモデルなど、様々な類型や呼び名が存在します。

プログラムセオリーの全体像を表現したものが以下の図です。

プログラムセオリー

Rossi (2003)をもとに、Intelligence In Society作成

プログラムセオリーにおけるプロセス理論は、

  • ターゲット集団に対するリーチやサービス提供の方法、サービス提供終了の判断基準などに関する「サービス利用計画 (Service Utilization Plan)
  • プログラムの提供に必要な資源・人材や管理方法、組織運営に関する「組織計画 (Organizational Plan)

の2つから構成され、これらが有効に機能することが、近位のアウトカムを実現する要件として整理されています。

プログラムセオリーは、プログラムの「プロセス」が、どのように「アウトカム」に繋がるかを可視化することで、プログラムとその成果の間の関係が「ブラックボックス化」することを防ぎ、プログラムの改善に役立つ情報を提供することに大きな価値があります。

上述の通り、インパクト理論は複数の「仮説」によって構成されており、その理論(=仮説)に欠陥がある場合や、理論は有効だがプログラム自体が適切に運営されていない場合には、プログラムによって期待されるはずの成果は実現されません。

当初期待された成果が得られなかった場合に、その原因がプログラムが前提とする理論や計画にあったのか、あるいはプログラムの実施プロセスに問題があったのかを把握する上で、プログラムセオリーの考え方を活用することが有効な方法の一つとなります。

インパクト理論とインパクト評価

インパクト理論は、「手段と目的」すなわち「原因と結果」の関係であることから、これを評価するためには、目的とする社会状態の実現に対して「プログラム以外の外部要因」が与えた影響を可能な限りコントロールし、プログラム自体による純粋な成果を抽出することが必要となります。

インパクト評価 (Impact Evaluation/Impact Assessment)」とは、プログラムが一定期間実施された後に社会の状態に生じた変化(アウトカム)が、実際にプログラムによってもたらされたものであるかどうかを検証する活動を指します。

これまで解説したインパクト理論やプログラムセオリーによって、プログラムが成果を生む一連のロジックを明確にした上でインパクト評価を実施することは、プログラムの改善やアカウンタビリティの確保において有効な手段となります。

「インパクト評価」に関する詳細は、以下の記事をご覧ください。

ここまで、プログラム評価における重要な概念の一つである「インパクト理論」について、その意味やプログラムセオリーとの関係性、評価に関する考え方などを解説しました。

当記事に関連するトピックの詳細については、以下のページをご覧ください。

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参考文献・注記:
◦Peter H. Rossi, Mark W. Lipsey, Howard E Freeman. (2003) “Evaluation: A Systematic Approach (Seventh Edition),” SAGE Publicationsを参考。
◦ 源由理子・大島巌(2020)『プログラム評価ハンドブック-社会課題解決に向けた評価方法の基礎・応用-』, 晃洋書房

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