この記事では、事業評価などの文脈で重要なアウトプット・アクトカム・インパクトなどの概念について、その意味を具体例をもとに解説します。
<目次>
各概念の概要
「インプット」「アクティビティ」「アウトプット」「アウトカム」「インパクト」は、社会課題の解決を目指す事業などにおいて、その構造をロジックモデルで記述したり、実際の価値をプログラム評価によって明らかにする際に使用される重要な概念です。
それぞれの概念が何を意味するのかについては、以下のように整理することができます。
| インプット | 事業やプログラムを実施する上で直接的ないし間接的に必要とされ、投入される資源 |
| アクティビティ | 事業の目的を具現化したもので、事業の目的達成のために実施する具体的な活動 |
| アウトプット | 活動を実施することで生み出される財・サービスや状態。活動による産出物 |
| アウトカム | 事業の対象となった個人や集団、社会にあらわれる状態の変化。事業による効果・成果 |
| インパクト | 一定期間を経て現れる、派生的・副次的な影響を及ぼす長期的な変化(ロジックモデル) 事業やプログラムの純効果、net effect(インパクト理論) |
最も基本的な構成のロジックモデルでは、以下のような形で各概念が構成要素として並べられた上で矢印で繋げられ、インプットからインパクトに至るまでの論理構造が、一つの流れとして表現されます。
作成:Intelligence In Society
以下では、各概念の詳細について具体例をもとに解説します。
各概念の詳細と具体例
①インプット(投入資源)
インプットは、事業やプログラムを実施する上で直接的ないし間接的に必要とされ、投入される資源を意味します。投入される資源の種類によって、以下のよう区別されます。
ヒト:
事業の運営管理者やプログラムの提供者、協力機関のスタッフなどの人的資源。
個人・組織間や地域レベルの人的ネットワーク
モノ:
事業に使用する設備や備品、車両など
カネ:
運営費、人件費、消耗品費、施設利用料、通信費などの費用。
参加費・サービス利用料や助成金などの収入
情報:
事業やサービスの構築に必要な知識・ノウハウ。
サービス利用者などに関する基本情報など
マネジメント:
企画、計画、記録、評価、管理、人事などの運営業務
以下は、生活困窮状態にある若年層に対して、SNSを使ったコミュニケーションによるアウトリーチを行うことで、困窮者支援に関する情報の提供や、支援申請手続きのサポート行うプログラムにおけるインプットの例です。運営予算、運営スタッフ、外部専門家などの人的資源に加えて、SNS等ツールなどがインプットとして整理されてます。
②アクティビティ(活動)
アクティビティ(活動)は、特定の問題を解決するという事業の目的を具現化したもので、事業の目的達成のために実施する具体的な活動を指します。インプットを使って具体的にどのような活動が行われるのか、にあたります。
生活困窮状態にある若年層に対するサポートプログラムの例では、広告LP(ランディングページ)の作成、検索連動型広告の掲載、広告流入者のSNS登録誘導、SNS登録者の管理などのプログラムの具体的な活動がアクティビティとして整理されます。
③アウトプット(産出・結果)
アウトプット(産出・結果)は、アクティビティを実施することで生み出される財・サービスや状態などを意味します。活動を行うことで、それによって目的の成果が達成されたか否かに関わらず、必ず何かしらの産出物が生み出されますが、これがアウトプットにあたります。活動が実際に実施されたことを示す具体的な事実と捉えることも可能です。
アウトプットには、活動の回数や期間、具体的な内容、サービスが提供された対象者の人数や属性といったことを示す事実や数値などが含まれます。なお、アウトプットは「結果」と訳されることもあるため、次に解説するアウトカム(成果)と混同されることがありますが、アウトプットとアウトカムは明確に異なる概念です。
生活困窮状態にある若年層に対するサポートプログラムの例では、困窮者支援に関する情報提供や支援申請手続きのサポートを行った事実やその内容、対象人数などの数値がアウトプットとして整理されます。
④アウトカム(成果)
アウトカム(成果)は、事業を実施することによって、事業の対象となった個人や集団、社会にあらわれる状態の変化を指します。アウトプットがあくまで事業による産出物であるのに対して、事業を実施したことで期待される変化が生まれたか否か(効果・成果があったか)は、このアウトカムによって表現されます。
ロジックモデルなどにおいては、アウトカムは成果が実現される時間軸やその効果の波及プロセスによって、事業による直接的な成果を表す「直接アウトカム」、最終アウトカムの実現に貢献する成果を表す「中間アウトカム」、最終的に実現を目指す社会の状態を表す「最終アウトカム」の3つに分けられます。特に「最終アウトカム」は次に解説する「インパクト」とも呼ばれます。
なお、インプットやアクティビティ、アウトプットと違い、アウトカムはそれ自体を事業によって直接コントロールすることはできないため、当初意図したものとは異なるアウトカムが得られることも考えられます。当初意図していなかった副次的な効果や、事業による副作用などのネガティブな効果についても、事業によるアウトカムの一部として考慮することが必要です。
⑤インパクト
インパクトは、ロジックモデルにおいては、事業を実施した後に一定期間を経て現れる、派生的・副次的な影響を及ぼす長期的な変化を意味します。
生活困窮状態にある若年層に対するサポートプログラムの例では、「対象者が、自身がどのような支援を受けられるのかを知る」「対象者が、自身の必要とする支援を受けられるようになる」などがそれぞれ直接アウトカム、中間アウトカムとして整理された上で、より長期の派生的な成果として「対象者の生活困窮が軽減し、安定して日常生活を送れるようになる」というインパクトが表現されています。
なお、「インパクト」という言葉はプログラム評価やそこで用いられるインパクト理論においては異なる意味合いで使用されるため注意が必要です。プログラム評価やインパクト理論におけるインパクトは、事業やプログラムの純効果(net effect)、つまりアウトカムとして観測された変化のうち、事業以外の要因によって生じた部分を除いたピュアな効果を意味します。
プログラム評価におけるインパクト評価は、この「純効果」としてのインパクトを、事業と成果の間の因果関係に着目することで評価する手法です。
インパクト理論、インパクト評価に関する詳細は以下の記事をご覧ください。
ここまで、事業評価などの文脈で重要なアウトプット・アクトカム・インパクトなどの概念について、その意味を具体例をもとに解説しました。
当記事に関連するトピックについての詳細は、以下のページをご覧ください。
また、プログラム評価・社会的インパクト評価に関する全ての記事は、以下のページからご覧いただけます。
参考文献:
◦佐藤徹(2021)『エビデンスに基づく自治体政策入門』, 公職研
◦安田節之 (2011)『プログラム評価ー対人・コミュニティ支援の質を高めるためにー』, 新曜社
◦源由理子・大島巌(2020)『プログラム評価ハンドブック-社会課題解決に向けた評価方法の基礎・応用-』, 晃洋書房
◦2. Peter H. Rossi, Mark W. Lipsey, Howard E Freeman. (2003) “Evaluation: A Systematic Approach (Seventh Edition),” SAGE Publications